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地震と活断層について(4)内陸型地震(その2)

2021年11月24日

 プレート境界型地震も内陸型地震も、プレートの運動によって地殻にひずみが蓄積し限界を超えたときに、岩盤が断層面にそって破壊されて発生します。この破壊が繰り返し起こっている断層を【活断層】と呼びます。活断層の規定は研究者によって違いますが、「新編・日本の活断層」では、新生代第四紀(約258万年前~現在)に動いたとみられ、これからも活動する可能性のある断層を活断層と規定しています。

 内陸地震はプレート境界型地震と無関係に発生しているわけではなく、一定の関係をもって起きているようです。歴史的資料が多い西日本の記録から、南海トラフ大型地震と内陸地震には関連があり、内陸地震には活動期と静穏期があるらしく、現在は次の南海トラフ地震に向けた活動期にある、とみられています。しかし、この関係についてはまだよくわかっていないというのが現状です。

 内陸型地震の発生メカニズムは、相当に複雑だと考えられています。下図は、日本内陸部の活断層分布図です。これを見ると、日本は活断層だらけなのですが、その分布には偏りがあり、北海道・東北地方より、中部地方から近畿地方に多いことがわかります。特に伊勢湾-若狭湾-大阪湾を結ぶ近畿三角地帯と呼ばれる地域に集中しています。

 この地域には根尾谷断層や跡津川断層、養老―桑名―四日市断層帯など、活動度A級(1,000年に1~10mの変位を起こす活断層)の大関・横綱級の活断層が目白押しです。

 ところで、この地域には火山が分布していません。白山から鳥取県の三瓶山までの区域を火山の空白地帯と呼びますが、この区域が重なっていることは偶然ではありません。これはフィリピン海プレートが低角で沈み込んでいることと関係していると考えられています。つまり、沈み込んだプレートが部分融解する温度と圧力にならないためマグマが供給されず、地殻が比較的低温になっているということです。

火山に近い場所はマグマの貫入により地殻上部も比較的高温になります。高温の岩石は低温の岩石に比べてゆっくりと変形を起こすことができるため、地震のように一気にバリバリと壊れずに、ひずみを解消することができます。したがって、火山の空白域である近畿地方の地殻は低温で地震発生層が厚く、大きな内陸型地震を起こしやすいと考えられています。

 これ以外にも、地下深部のプレートの動き、プレートから供給される水の働きの違いなどにより、各地域での地震の特徴の違いが生まれているといわれています。まだまだ分かっていないことがたくさんありますが、それは何よりも、内陸地震の活動間隔の長さによっています。プレート境界型地震が数十年から数百年間隔で繰り返すのに比べ、内陸型地震は数千年から数万年間隔で発生します。はじめにとりあげた北伊豆地震も、再び活動するのは千数百年後と予想されています。また、まだ知られていない活断層もあるはずです。個々の活断層がどのような特徴をもって再び活動するのか私たちは知らないのです。

 補足になりますが、前回新潟県中越沖地震について、海底下にあっても内陸地震を起こす断層に分類される、と書きましたが、逆に内陸にあってもプレート境界型に分類される活断層があります。具体的には静岡県にある神縄―国府津―松田断層帯と富士川断層帯です。

 伊豆半島はフィリピン海プレート上にあり、この二つの断層帯は陸側プレートとフィリピン海プレートの境界です。神縄―国府津―松田断層帯は相模トラフの延長であり、富士川断層帯は駿河トラフ―南海トラフの延長に相当しています。それぞれのトラフでのプレート境界型地震が発生するときに(毎回ではないが)連動して活動すると考えられています。