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地震予知について

2026年02月27日

 昨年12月8日深夜、青森県東方沖を震源とするM7.4の地震がありました。青森県の太平洋側を中心に最大震度6強の地震でしたが、幸い死亡者はおらず、けが人も50数名、建物等の被害も震度の大きさの割には比較的少なくすみました。この地震で「後発地震注意情報」という耳慣れない情報が気象庁、内閣府から発表されました。

 この注意情報の対象は、北海道から千葉県までの7道県、182の市町村に及んでいます。国は事前の避難は求めないが、地震の発生から1週間程度大規模な地震の発生に注意し、日ごろからの備えを見直し、すぐに避難できるよう備えておくことを求めました。

 「北海道・三陸沖後発地震情報」は、日本海溝・千島海溝沿いの領域で規模の大きな地震が発生すると、その影響を受けて新たな大規模地震が発生する可能性が相対的に高まると考えられているため注意を呼び掛けるとしています。2011年の東日本大震災の時にも、その数日前にM7.4の先発地震が発生しています。こうした前例からの発表でしょう。

 昨年8月8日には日向灘を震源とするM7.1の地震があり、はじめて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意報)」が発表されました。幸い南海トラフ地震は現在も発生していません。今回の「北海道・三陸沖後発地震」も発生する可能性は100分の1程度だと言われ、実際に発生することもありませんでした。

 そんなわけで私の知人にも「地震学者の言うことなんかあてにならん」という人もいます。「もう50年も前から東海地震が起きると言われて、地震が終わったら静岡に帰ろうと思っていたけど、こんな年になってしまってもう帰れない」と言っている静岡出身の人もいました。地震予知は難しい、というよりいつ、どこで、どの程度の地震が起きるのかという一番知りたいことを現在の科学で予知するのは不可能です。だからと言って地震学を中心とした地球科学が役に立たない、というのも無理無体というものです。

 昨年の7月に南西諸島のトカラ列島周辺で群発地震がありました。悪石島や小宝島といったふだん聞くことの少ない離島の地名も耳慣れたものになりました。一般的に群発地震は大地震になりにくいとされていますが、一昨年1月の能登半島地震は群発地震から始まり、大地震になってしまいました。現在はほぼ終息しているものの、トカラ列島の群発地震はどうなのか気になったので、科学者がどう見ているのか新聞などの記事から調べてみました。

 学者によってプレート境界の動きに起因する地震とする説と、マグマの動きによる地震とする説がありました。

 熊本大学の横瀬久芳准教授は、フィリピン海プレートの琉球海溝への沈み込みのメカニズムから説明しています。(2025年6月27日読売新聞オンライン版)

 長大な琉球弧の中で群発地震が起きているのは悪石島、小宝島周辺だけです。この海域には巨大な海底山脈である大東海嶺や奄美海台があり、ユーラシアプレート側の地殻を押し上げ複雑なひずみを生じさせ、そのひずみが大きな横ずれ断層を生み、地殻内の活断層として活動しています。群発地震はプレートが沈み込む地点から離れているが、これはすでに沈み込んだ奄美海台の先頭部分が地震発生に影響しているためだ、と説明しています。

     フィリピン海プレートの動きとトカラ列島周辺の海底地形

     (Google Mapを編集)

   横瀬准教授による地震発生メカニズム(読売新聞オンラインから)

 東大地震研究所の笠原順三名誉教授は、地下からのマグマの上昇に注目して解説しています。(2025年7月3日FNNニュース)

 フィリピン海プレートに乗った軟らかい堆積物が海水を吸い込んで地下に沈み込むと、地下深部で高温高圧にさらされ、水分が放出されます。この水が岩石の融点を下げマグマが発生します。7月3日の最大震度6の地震では震源が浅くなっていることから、マグマが上昇し地下のき裂に入り込み、裂け目を広げ地震が発生しているのではないか、と説明していました。

 また、京大防災研究所の西村卓也教授も、「地下のマグマの動きが周辺の岩盤を割ったり、周辺の断層を刺激して群発地震につながっているのではないか」と指摘しています。(2025年7月8日TBSNEWS)

 視点は違っているものの、「プレート境界に特有の原因で起きている」と見ていることは共通しています。

 今回のトカラ列島群発地震では、7月3日にM5.5、最大震度6弱の地震がありました。M(マグニチュード)が小さいわりに震度が大きかったのは震源が浅く、住民がいる場所に近いという理由によります。7月4日からは悪石島、小宝島の住民が鹿児島市に避難する事態になりました。すでに島に帰還されていますが、小宝島では小中学生の離島留学を進めるなど、人口減少を食い止める取り組みが積極的に進められています。島の人たちの安定した生活を願わずにはいられません。

 現在の地球科学で地震の発生を予知することは無理だ、と書きましたが、これは多くの地震学者も認めているところです。ただ、地震がプレートの運動で起きていることはほとんどの地球科学者が認めています。「プレートテクトニクスはもはや時代遅れで、間違っている」と主張する少数の科学者もいますが、それは地震予知の道から遠ざかるものです。

 明治17年(1884年)に始まった最初の天気予報は、「全国一般風ノ向キハ定リナシ 天気ハ変リ易シ 但シ雨天勝チ」というもので、全国の予報をこの一文で表しました。今風に言えば「全国の風の向きはいろいろです。天気は雨がちですが、変わりやすいでしょう」これではなんだかよく分かりませんよね。当時の人は気象台の予報より、下駄を転がしたほうがましだ、と言い合ったそうです。

 気象も地震も非線形な複雑系の現象であり、単純な法則に落とし込んで理解することはできません。それでも140年余りの研究とデータの積み重ね、そして何より気象衛星の力により現在では相当程度に予知・予測が可能になりました。毎日の気象情報で、市町村ごとの天気が詳細に、かつほぼ正確に出されています。

 地球内部の現象は気象よりもはるかに見えにくいものです(地球内部だからそもそも見えない)。現在の地震学では、起きた現象については非常に正確にわかっています。どこで(震源)、どの程度の広さが(震源域)、どの方向に、どの程度動いたのかはわかります。しかし、では次に、いつ、どこで、どのくらい動くのかはまだ分かりません。これがわかるようになるにはまだまだ時間がかかるでしょう。しかし科学はそうして進歩してきたのです。

 何度も言われていますが、日本(だけでなくプレート収束帯の地域)では、いつどこで地震が起きてもおかしくありません。地震情報に注意しながら不断の備えをして生活していくしかないのです。家具の固定や非常食、水の確保など耳タコになるほど注意事項が言われています。今はそれに尽きると思います。

 とはいえ、地震学者の皆さん、頑張ってください。期待しています。