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温暖化について(2)氷河期についてのレビュー

2020年04月13日

 温暖化を考えるにあたって、地球の気候は過去どうであったのか、それに比べて現在はどうであるのかを知っておくことは重要です。そこで氷河時代について簡単にレビューしておきたいと思います。
 以下の図は、海底から得られたボーリングコアに含まれる有孔虫化石の酸素同位体18Oの比率の推移を表したグラフです。

 

                  神奈川県立生命の星・地球博物館「ワークテキスト+2℃の世界」より

  酸素は普通14Oですが、少量の同位体18Oがあり、寒冷化すると有孔虫に取り込まれる18Oの比率が高まることが知られています。つまり、このグラフでいうと、山の部分は気温が高く、谷の部分は気温が低いことを表しています。このグラフの山と谷はおよそ10万年間隔で表れており、過去100万年間のこの周期こそ氷期(寒い時期)と間氷期(暖かい時期)の周期を表しています。
 今からほぼ2万年前から急激に気温が上昇し、やや下がり始めているのが現在にあたります。これまでのグラフと比較すると、間氷期が終了し次の氷期に入りつつあるように見えます。(ただし、そのまま下がるのか、また持ち直すのかはまだわかりません)
 前回スノーボールアース仮説について書きましたが、これ以外にも地球は何度か長い寒冷期を経験していることが知られています。ところで氷河時代とは、南北極地の大陸氷床や高山の氷河が存在する時代のことを言います。その間には全く氷床や氷河のない時代があり、地球の全歴史ではこの温暖な時代のほうがはるかに長かったと考えられています。
 今わかっている氷河時代は以下のとおりです。


・ヒューロニアン氷河時代:24億年前から21億年前
・クライオジェニアン氷河時代:8.5億年前から6.3億年前
・アンデス‐サハラ(オルドビス紀)氷河時代:4.6億年前から4.3億年前
・カルー(ゴンドワナ)氷河時代:3.6億年前から2.6億年前
・新生代第四紀氷河時代:258万年前から現在


 私たちはこの最後の氷河時代に生きています。そして今は約12,000年前に始まった間氷期(完新世)にあたっています。
 現在の氷河時代(寒冷化)の原因については、様々な要因があげられていますが、中生代に存在したゴンドワナ大陸の分裂と大陸の再配置によって海水流が変化したこと、特に南極大陸が現在の位置に移動し、南極環流が生まれることにより冷たい深層海流循環が発生し、地球全体の寒冷化が起こったといわれています。また、パナマ地峡の形成による海流の変化、ヒマラヤ山脈の隆起による大気の流れの変化なども寒冷化の要因に上げられています。
   氷期‐間氷期のサイクルについてはミランコビッチサイクルがよく知られています。
 ユーゴスラビアの地球物理学者ミランコビッチは、地球の離心率の周期的変化、地軸の傾きの周期的変化、自転軸の歳差運動の組み合わせによって、日射量が周期的に変化し、これが氷期‐間氷期の周期を決めていると指摘しました。このミランコビッチが指摘したサイクルは、実際に酸素同位体比から得られる気候変動の周期とよく一致しています。
 さらにもう一つ、地球の気候に対する太陽活動の影響も指摘されています。太陽は9年から14年の周期で黒点の増減やフレアの発生を行っていることが知られています。つまり太陽の出す放射エネルギーが一定の周期で変化しており、この変化は当然地球の気候に影響を与えます。1645年から1715年には、マウンダー極小期と呼ばれる太陽活動の低下期があり、世界各地で寒冷化が起こりました。これは小氷期といわれています。
 ここまでのところをまとめてみましょう。
① 氷河時代は大陸の位置と海水流、大気の流れの変化、生物の働きも含めた二酸化炭素、酸素の比率の変化によって起こる。(超巨大火山噴火の影響も考えられています)
② 日射量の周期的変化と太陽活動に影響され、氷期と間氷期を繰り返す。
③ 本来であれば、現在は間氷期から氷期への移行期に入っている可能性が高い。
 それではこのような中で、今取りざたされている地球の温暖化議論をどのように見ていけばいいのでしょうか。次回以降取り上げていきます。