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温暖化について(3)温暖化議論をどう見るのか

2020年05月11日

 ICPP(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書では気候変化とその影響に関する観測結果について、次のようにまとめています。
・気候システムの温暖化には疑う余地がない。
・このことは、大気や海洋の平均温度の上昇、氷雪の広範囲にわたる融解、世界平均海面上昇が観測されていることから明白である。
と断定しています。そしてその原因について、
・その大部分が人間活動による温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高く、その大部分を二酸化炭素が占めている。
 私たちが肌で感じる現象、例えば今年の冬は記録的な暖冬で、こんなに雪の少ない冬は記憶にないとか、去年の夏も記録的な猛暑で、エアコンをつけっぱなしだった、などの感覚は確かにこの報告書を裏付けているように感じます。しかし、気象は常に異常なのであって毎年平年並みということはありません。ここはやはり世界的平均値で見るべきでしょう。そして、ICPPが発表しているグラフは確かにこの意見を裏付けています。

「あー、やっぱり地球は温暖化しているんだから何とかしなくちゃ」と思ってしまいますよね。
 一方でこのICPPの見解に真っ向から反対している人たちもいます。
 反対意見はおおむね次の3種類があるようです。
・ICPPのデータは裏付けにとぼしい。温暖化しているということ自体が疑問である。
・温暖化していることは事実だが、二酸化炭素の人為的排出が原因ではない。
・そもそも温暖化すること自体に問題はない。寒冷化と温暖化を比較すれば温暖化のほうが人類にとってはるかに有益である。
 温暖化のデータへの疑問について、高名な物理学者のフリーマン・ダイソン氏(アメリカ・プリンストン高等研究所)は次のように述べています。
「気候を理解したというのは、気候学者の思い上がりにすぎません。彼らが頼るコンピュータシミュレーションなど、変数をいじればどんな結果でも出せる代物ですからね。・・・私自身、科学の話ならたいてい多数意見に従いますが、ただ1つ、気候変動の話は違います。科学の目で見るとナンセンスそのものですから。」
「ホンマでっかTV」でおなじみの武田邦彦中部大学教授は「温暖化は良いことばかりで悪いことは少ない。たとえば食物の収穫、病気の打撃、住みやすさなど、当たり前のことだが、温暖化した方が良い。」と述べています。
 ICCPの見解もこれに反対する人たちの見解も、それぞれ根拠を持った意見であり、正直どちらの意見が正しいのか私のような素人は判断に苦しみます。とはいえ、現在いえるのは次のようなことではないでしょうか。


・数万年後という長期的なスパンで考えれば寒冷化のことも考慮しなければいけないが、当面は温暖化による被害のほうが大きいと考えられる。
・太陽活動の影響やミランコビッチサイクルは人為的にはどうにもならないものであり、人為的な温室効果ガスの排出量のコントロールだけが人間が対応できるものである。
・したがって、とりあえずの対策ではあるが、二酸化炭素削減は取り組むべき大きな課題である。
・しかし、一方で二酸化炭素の排出によってすぐにでも人類が滅亡するかのような見解は極論であり、議論の深化を妨げるものである。


 といういたって平凡な考え方が私の結論です。
 長期的に人間が地球の気候環境をコントロールすることはできません。温室効果ガス、二酸化炭素を削減すれば地球環境を守ることができるという考えは幻想にすぎず、むしろ問題を矮小化してしまう可能性すらあります。
 なお、ICPPの報告書は長くてわかりにくいので、国立環境研究所・地球環境センターの【ここが知りたい地球温暖化】のページをお勧めします。
www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/qa_index-j.html