TEL 022-372-7656

一紀と二紀はどこへ行ったのか(2)地球の黎明期

2023年06月23日

 小学生に「タイムマシンに乗っていくならどの時代に行きたいか」というアンケートをしたところ、1位が「恐竜がいた時代」、2位が「江戸時代」、3位が「未来」という結果だったそうです。(2011年(株)バンダイの調査)「ドラえもんがいる時代」という答えもありました。かわいいですね。

 子供に人気のある恐竜は、1位はやっぱりティラノサウルス、2位はトリケラトプス、3位がモササウルスだそうです。モササウルスが入ってくるのは映画「ジュラシックワールド」の影響でしょうか。海中からザッパーンと飛び出す姿は迫力満点でした。

       モササウルスー映画「ジュラシックワールド」より

 恐竜は古代の生き物のなかでは一番有名なものでしょう。46億年の地球の歴史の中でも、古生代、中生代、新生代(まとめて顕生代と呼びます)は比較的親しみやすい時代です。中生代から新生代の境界に小天体が地球に落下して、恐竜が絶滅したことなどは広く知られています。

 古生代では、カンブリア紀の「生命の大爆発」と呼ばれるように、それ以前に比べ圧倒的に多くの生物の種が生まれました。オルドビス紀には植物が陸上に進出し、デボン紀にはそれを追うように両生類が陸上に現れます。石炭紀にはシダ性の大木が繁茂し、巨大な昆虫がそこで生きていたと考えられています。

 ペルム紀―トリアス紀の境(PT境界)での大絶滅をはさんで、中生代には恐竜やアンモナイトなどが繫栄し、鳥類、哺乳類も出現しました。中生代末の恐竜の絶滅後に哺乳類の繁栄と、ヒト科の登場があります。これらの時代は情報がたくさんあり、子供向けの図鑑もとりどりです。

 古生代から新生代に比べると、それ以前の時代は何があったのかピンときません。今の教科書はどうかわかりませんが、昔の教科書にはほとんどなにものっていなかったような気がします。それも無理ありません。原核生物とか真核生物とか目に見えないような生物しかいなかったのですから。しかし46億~5.5億年前の長い長い期間は、その後の地球・生命の発展を準備する重要な期間であったことがわかってきました。

 古生代以前の時代は次の三つに区分されています。

冥王代(46億年前~40億年前):地球表面がマグマオーシャンに覆われていた時代。

太古代(40億年前~25億年前):地球表面に海と陸が分布するようになった時代。

原生代(25億年前~5.5億年前):二酸化炭素に変わって酸素が大気中に増え、超大陸が生まれた時代。

 現在発見されている最も古い岩石は、カナダ北西部で見つかったおよそ40億年前のアスタカ片麻岩と言われています。今後さらに古い岩石が見つかると思われますが、カナダ北部からグリーンランド周辺に最古の岩石がある、つまり最初の陸地がこのあたりに集まっていると考えられています。

 微惑星が衝突、集合して生まれたばかりの地球には、別の初期惑星が衝突して月と地球に分かれたジャイアントインパクトがあり、さらに重爆撃期と呼ばれるその後の隕石など小天体の衝突によりドロドロに溶けていたと考えられています。その後徐々に冷却され、大量の水蒸気が雨となって降り注ぎ、やがて水に覆われた地球が生まれました。その水に冷やされて(最初は熱湯です)地殻と海が生まれます。

 地球は宇宙空間に熱を放射しながら徐々に冷えていきます。そして地球内部では、重い金属は中心のコアに沈み込み、コア(核)・マントル・地殻に分化していきます。内部の熱を外側に運ぶために発生したのがマントルの対流です。

 マントル対流は地殻ができてほどなく始まったと考えられています。対流は熱が高いと小さな対流をたくさん起こします。現在のマントル対流はマントル全体で対流していますが、初期は上下二層で対流していたようです。そしてその対流にのった地殻は沈み込みをはじめ、その部分に陸地ができ始めました。最初にできた陸地は火山島から始まり(今の西之島みたいなかんじだったと思われます)、やがて日本列島のような島弧に発展していきます。そして今でいえばマダガスカル島のような規模の小型の大陸へと成長していきました。

 最初の生命も海ができてからそう遅くない時期に生まれたようです。38億年前のグリーンランドの岩石から、最初の生命の痕跡が炭素の黒いシミとして発見されています。

 生命がどうやって誕生したのかはさまざまな説があります。有名なものにオパーリンの「化学進化説」があります。原始地球の海で、無機物から低分子有機物が生まれ、高分子有機物の集合体になり、やがて有機物を取り込んでいく中で最初の生命が生まれた、という説です。これを実験的に実証したのが、ユーリー・ミラーの実験で、メタン、水素、アンモニアを混合し、電気放電によってアミノ酸を生成しました。このほかに宇宙から飛来したアミノ酸から生まれたとする説や、海底の熱水噴出孔で生命が誕生したとする説も有力です。

     深海の熱水噴出孔と生物群(海洋研究開発機構より引用)

 いずれにしても40億年~35億年前に原始の海の中で生命は生まれ、それは酸素を嫌う、原核生物と呼ばれる原始的な細菌であったようです。生命は地球内部の動きと複雑に関係しながら、次の地球の動きを準備していきます。

 およそ27億年前~25億年前に、地球は大きな変化を迎えます。一つは27億年前に光合成をおこなう生物が出現したことです。もう一つは、ほぼ同じころに地球磁場が発生したことです。この二つの事件は、その後の地球の歴史に極めて大きな影響を与えていきます。次回はこの事件について説明します。